夫婦喧嘩のルール

2019年7月18日 心と潜在意識

 

「夫婦は、けんかを繰り返しながら絆を深めていくものだ」と、よく言われます。

これは確かに、一面の真実です。お互いに仮面をかぶって「いい顔」をし合うのをやめ、切り出しにくい本音をぶつけ合うプロセスの中でこそ、私たちは本当の意味でお互いを知り、受け入れ合っていくことができるからです。

しかし同時に、ただの一度の喧嘩の最中に、二度と修復できないほどの致命的な傷を負ってしまう夫婦が少なくないことも、また厳然たる事実です。

感情に任せて放った「言ってはいけない一言」が、刃となって相手の心を切り裂き、それがそのまま修復不可能な離別へと繋がってしまうケースは後を絶ちません。

私たちが目指すべき、お互いを受け入れ合うために必要なプロセスとは、あくまでも「本音の話し合い」であり、決して「言葉の凶器を使った攻撃のし合い」ではないはずです。

ですから、「夫婦喧嘩」という営みからは、できる限り相手を傷つける「攻撃的な要素」を徹底的に排除していかなければなりません。それこそが、大切な関係性をリスクにさらすことなく、本来の対話の目的を果たすための唯一の道なのです。

そのために、私たちが今すぐ実践すべき「4つの具体的な知恵」があります。

1.相手が「聞ける時間」に話す

人間には、他人の話を「受け入れられる時」と、「どうしても受け入れられない時」があります。

仕事に追われて頭がいっぱいの時や、激しい疲労困憊にある時に、家庭内の重く難しい問題についてじっくり耳を傾ける余裕などあるはずがありません。また、不機嫌な時や体調が悪い時も同様です。

「今は聞けない」とはっきり言葉にしてくれれば分かりやすいのですが、多くの場合は拒絶する罪悪感から、あるいは何かに心を奪われすぎてその言葉にすら気づかないまま、「生返事」でやり過ごしてしまいがちです。まず、相手のキャパシティを見極める優しさを持つことです。

2.「あなた(You)」の話をしない

夫婦喧嘩が勃発するとき、会話の主語はほとんど「あなた」になっています。

「あなたはどうしていつもそうなの!?」「だいたい君は昔から……」

このように語られる言葉の本質は、自分側の事情の吐露ではなく、相手に対する一方的な「決めつけ」であり、断罪です。

人間は、自分について何かを決めつけられた瞬間、それを「人格への攻撃」と受け取ります。攻撃を察知した脳は、瞬時に「自己防衛モード」へと切り替わり、反撃に出るか、自己正当化に固執するか、あるいはシャッターを下ろしてコミュニケーションを放棄します。この防衛反応のぶつかり合いこそが、不毛な夫婦喧嘩の正体です。

何かを改善するために話し合うという目的から見れば、これほど非効率なやり方はありません。状況を良くするためには「相手の協力」が不可欠であるにもかかわらず、相手を自己防衛に走らせてしまっては、協力など絶対に引き出せないからです。大切なのは、相手が防衛の盾を構えなくて済むような話し方を、こちらが選択することです。

3.主語を「私(I)」に変えて話す

どんな人間にとっても、自分を決めつけられるのは不愉快なものです。あらゆる人間関係において、主語を「あなた」から「私」に変えたコミュニケーション(「私はこう感じて寂しかった」「私はこうしてもらえると助かる」)を行うべきですが、特に夫婦やパートナー間ではこれが決定的な意味を持ちます。

なぜなら、距離が近い夫婦ほど「自分は相手のことをすべて分かっている」という傲慢な思い込みが強いため、「あなた」という言葉の響きが、より冷酷な断罪として相手の胸に刺さってしまうからです。

4.相手の話を最後まで聞く

これもまた、「相手のことは分かっている」という思い込みや、相手との心理的境界線が曖昧になっていることが原因で、相手が話している途中で言葉を遮り、自分の言いたいことを被せてしまう悪癖です。夫婦間で非常によく見られる光景ですが、私たちはパートナーの事情をすべて把握しているわけではありません。

相手の現在の言言動の背景には、必ず何らかの理由や事情が存在します。その背景を深く理解しようともせずに、お互いの役割や期待をすり合わせることなどできるはずがないのです。

また、話の途中で言葉を遮られるということは、一人の人間として強烈な不快感を伴うものです。当然、人格を尊重されているとは感じられないでしょう。言葉を遮る行為そのものが、相手にとっては「攻撃」と感じられることも多いのです。

あからさまに言葉を遮らなくても、途中で呆れたように深い溜め息をついたり、話す気を削ぐような冷めた態度をとることも全く同じ害をもたらします。それらの態度は、「あなたの話など聴く価値がない」という強烈な決めつけのサインであり、暴力的に話を遮っているのと同義なのです。

人間関係を豊かに成熟させていくためのアプローチは、他にもたくさんあります。

 「相手の人格」を変えようとするのではなく、具体的な「行動」の変更を求めること

 変えてほしいことは、命令ではなく「依頼」の形でエレガントに伝えること

 してくれたプラスの行動に対しては、惜しみなく褒め言葉を贈ること

 感情が爆発する前に、定期的に話し合える二人の「習慣やルール」を築いておくこと

夫婦という世界で最も近い関係だからこそ、私たちは「正しさ」で相手を殴るのをやめなければなりません。

相手をコントロールしようとするエゴを手放し、敬意を持って「対話」を重ねた先にのみ、何ものにも壊されることのない本物のパートナーシップが完成するのです。