IBSの人は土踏まずを踏もう

先日、歌舞伎座へ足を運んできました。

舞台上で繰り広げられる役者の方々の足の置き方、姿勢、そして洗練された所作の数々――。その一切の無駄がない美しい身体の使い方は、私にとって大きな学びであり、深く感動するひとときでした。

美しい所作や姿勢は、単に見栄えが良いだけでなく、私たちの内面や内臓の健やかさと密接に結びついています。

心の揺らぎが、身体に落とす影

日常のなかで、過敏性腸症候群(IBS)の症状に悩まされている方は少なくありません。普通の人よりもデリケートにお腹の調子が崩れやすく、常に周囲への気遣いや不安を抱えながら社会生活を送ることは、本当に孤独で、言葉に尽くせない苦悩があると思います。

実は、私自身もかつてはその一人でした。

この症状を抱える方の多くには、ネガティブな事象を頭のなかで繰り返し再生してしまう「反芻(はんすう)思考」という知性ゆえの特徴が見られます。

過剰に巡らせた思考や感情のストレスは、行き場を失って消化器官へと溜め込まれていきます。すると身体は、無意識のうちにお腹を守ろうとして、内側へと丸まるような姿勢をとるようになるのです。その結果、内臓が物理的に圧迫され、水分代謝や消化のメカニズムが滞り、ガスや便通の乱れといった形で身体がSOSを発し始めます。

意識と経絡:足元から変えるアプローチ

この悪循環を断ち切るアプローチとして、東洋医学の「経絡(けいらく)」の智慧が非常に有効です。当方では実際の鍼は用いず、意識のフォーカスによってそのエネルギーの滞りを整えていきます。

なかでも鍵となるのが「脾経(ひけい)」と呼ばれるルートです。

脾経は、足の裏、特に母指側の「土踏まず」の近くを起点として身体を流れています。

この場所は、深層心理における「孤立感」「恐れ」「考えすぎ」「不確かなものへの不安」といった、内面の空虚さやストレスと深く共鳴している、極めてセンシティブな領域です。

土踏まずから、本来の自分へ

意識を整えることと並んで、今すぐ日常で実践できる確実な方法があります。それは、先ほどの起点である「土踏まず」の感覚をしっかりと使うことです。

具体的には、土踏まずで大地を踏みしめる感覚を意識しながら、心地よいペースでジョギングを行うこと。

頭に上りすぎた過剰なエネルギーを足の裏へと引き下げ、大地と繋がる感覚を肉体に思い出させてあげるのです。まずは3週間ほど、この感覚を意識して続けてみてください。滞っていた心身の循環が、自然と美しい流れを取り戻していくのを感じられるはずです。

私自身もジョギングを日課にしてから、イライラや過度な思考の波が静まることを感じます。

頭のなかの雑音を鎮め、ご自身の美しい身体の可能性を信じてあげること。

足元から意識を変えることで、本来のあなたらしい健やかさは、必ず内側から満ちてきます。