| 2019年5月31日 | 心と潜在意識 |

私たちが本当の幸せを実現するために、今あえて提唱したいのが、幸せ実現力を飛躍的に高める「大愚(たいぐ)な生き方」です。
平たい言葉で言ってしまうなら、それは「アホな生き方」にほかなりません。
アホというと、どこか悪い意味に捉えられるかもしれませんが、ここで言うアホとは「至高の柔軟性」のことです。すべての出来事を頭で合理的に裁こうとするのをやめ、非合理的なものさえもそのまま器に受け止める。そこには、他人の評価に一喜一憂しない、しなやかな「鈍感力」が宿っています。
何から何まで自分の力でコントロールしようとする傲慢さを手放し、適度にお任せすることができる。賢く、効率よく、最短距離で損得を弾くような小賢しい計算に縛られず、誠実かつ愚直に、目の前のことをコツコツと積み上げていくことができる。これこそが「大愚」の本質です。
筑波大学で世界的なDNA研究を行ってきた村上和雄先生は、「亀とうさぎ」の寓話を引いて、**「馬鹿は利口な人をあっさり抜いてしまうことができる」と言い残しました。
また、京セラの稲盛和夫名誉会長と、ノーベル賞受賞者であるiPS細胞の山中伸弥教授との対談においても、「賢く生きるより、辛抱強い馬鹿になれ」**という言葉が交わされています。有能な人間である前に、高い人間性を備えること。そのためには、目先の損得に惑わされない、辛抱強い馬鹿になることが大切なのだと彼らは述べているのです。
Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズもまた、スタンフォード大学の卒業式スピーチで、この言葉を三度も繰り返しました。
「Stay hungry, Stay foolish(ハングリーであれ、アホであれ)」
それは、既存の常識や他人の目線に踊らされることなく、自らの歩みを止めるなという、魂からのエールだったのではないでしょうか。
歴史に名を残す偉人たちがあえて「アホになれ」「馬鹿になろう」と説くのは、それが檻の外に出て自由に生きるための、唯一の鍵だからです。
では、私たちが日常生活のなかで、この「大愚な生き方」を実践し、理性と感性のバランスを取り戻すためには、具体的に何をすればいいのでしょうか。ここに、5つのアプローチを提案します。
1. 相手の言葉を「共感」して聴く練習をする
誰かの話を聴くとき、頭のなかで「良い・悪い」を瞬時に判断したり、原因探しやアドバイスをしようとしたりするのを一度やめてみてください。あたかも自分がその人になったかのように想像し、相手の見方、感じ方をそのまま自分の中に入れてみるのです。
その際、「それは辛かったね」「苦しいね」「嬉しいね」と、相手の感情にそのまま寄り添う言葉を返してあげられれば、より深い絆が生まれます。
この練習は、相手が困っていたり、葛藤を抱えていたりするときに最も効果を発揮しますが、実践する上で2つの重要な注意点があります。
① 自分の負担にならない範囲(時間枠)で行うこと
相手を変えようという下心が湧いたり、無理をして聴いていたりすると、心は無意識に拒絶を起こし、それが表情や態度に滲み出て相手を傷つけてしまいます。「最初の5分間だけ」など、自分を守るための枠を設定してください。
② 持ちつ持たれつの対等な関係を維持すること
友人や夫婦の間で、どちらか一方が常に受け止め側(疑似母子関係)に偏ってしまうと、関係性は必ず崩壊します。「今日は私が聴くけれど、今度はあなたが聴いてね」と言える対等さが必要です。
ただし、子育てにおいてはこの「持ちつ持たれつ」は通用しません。
子どもが甘える側であり、親はそれを無条件に受け止める側です。これを逆転させ、親が自らの愚痴や弱音を子どもに聴かせるようになると、子どもの発達に重大な影響を及ぼし、不登校や自律神経の神経症状として表面化するケースが非常に多くなります。親も一人の人間ですから、子どもの話を聴く際も、まずは自分の心の余裕という負担のない範囲を守ることから始めてください。
2. 今、この瞬間を五感で味わい尽くす
私たちは常に「何かをしながら」次の予定を考えて生きています。お茶やジュースを飲むときは、その味と温度だけに意識を向けてみる。音楽を聴くときは、作業のBGMにするのではなく、その音色だけに没頭してみる。過去への後悔や未来への不安から離れ、「今、ここ」の感覚をただ味わうことで、脳の飢餓感が静まり始めます。
3. ベストを尽くしたなら、後はすべて「天に任せる」
これは言うほど簡単ではありません。頭で疑い始めたら切りがないからです。
天に任せる心境に至るための絶対条件は、「自分にできる最大限のことはやりきった」という圧倒的な実感を自らに持たせることです。「まだどうにかできるのではないか」と迷いがあるうちは、やるべきことが明確になっていません。やれることを明確にし、全てを出し切って初めて、人は結果をコントロールしようとする執着から解放されます。
天に任せるとは、その後にもたらされる結果がどのようなものであろうと、ありのままを受け入れるということ。「これでいいのだ」と微笑む覚悟を持つことです。
4. 内なる「心の声」に耳を傾ける
自分の本当にやりたいことを遮っている「常識」や「社会通念」、そして「スキーマ(頑なな信じ込み)」の存在に気づいてください。
「私は周りからどう思われるのを恐れているのだろう?」「無能だと思われるのが怖いのだろうか?」と、内面に向けて自問自答を重ねるのです。その恐怖を自覚したうえで、今までの自分なら絶対に選ばなかった「小さき一歩」へチャレンジしてみてください。
5. 自分の中の「良心」を問い直す
すべての選択を損得勘定だけで測るのをやめ、「この選択は、人間として誠実と言えるだろうか?」「本当に相手の役に立つことだろうか?」「自分が得をしたいがために言っていないか?」と、自らの良心に静かに問いかけてみてください。無理のない範囲で、純粋な利他の精神を実践していくとき、心の深い部分が満たされていきます。
利己的な計算を重ねる「賢さ」を手放し、この5つを愚直に実践していくこと。
それによってもたらされる理性と感性の調和こそが、あなたを檻から解放し、本当の幸福へと導く「大愚な生き方」の真実なのです。














